森博嗣『作家の収支』個人にとっては最適の時代になってきたと思える一冊

作家の収支

本書が発売したとき(2015年11月発売)、にわかに森博嗣さんの記事を見かけるようになりました。森博嗣さんの作品を読まなそうな(失礼)アフィリエイターたちの間でも多くとりあげられていたのを覚えています。

なぜ話題になっていたかというと、本書はズバリ「お金」がテーマになっているからでしょう。

ということで、時間を空けた今、『作家の収支』を見ていきたいと思います。

 

作家の収支

本書は全4章で構成されています。

  1. 原稿料と印税
  2. その他の雑収入
  3. 作家の支出
  4. これからの出版

目次を見ると、作家が書いた本とは思えないですよね(笑)。

まさに「小説家になるためのガイド本」などに置かれていそうです。ちなみに森博嗣さんは『小説家という職業』という本も書いています(僕が初めて読んだ森博嗣さんの著作です)。

グループで協力し合うような仕事が多いなか、小説家だけは、ただ一人で作品を生み出す。その仕事によって、どれくらいの金額を稼ぐことができるのか、ということが、この本の内容である。

この文章に惹かれた人は読む価値が十分にあると言えます。

 

原稿料と印税

森博嗣さんを知らない方のために書いておくと、押井守監督のアニメ映画『スカイ・クロラ』の原作者です。最近だとドラマ『すべてがFになる』の原作者という方が思い浮かびやすいでしょうか。

本章では、書いた文章によってどれだけの報酬(「原稿料」と「印税」)が得られるかが書かれています。淡々と書かれていますが、スゴい数字が並びます。

『F』に関していえば、ノベルスで約1400万円、文庫で約4700万円の印税であり、この1作で、合計6000万円以上をいただいている。この作品は18万文字くらいだったので、執筆に30時間かかっている。ゲラ校正などを含むと、60時間ほどが制作時間になる(最初なので時間がかかった)。

※『F』とは、先ほどの『すべてがFになる』の略称になります。

 

その他の雑収入

本章では著作物以外に言及します。たとえば講演会やトークショー、インタビューなどの取材です。

また、映像化されたときの使用料などにも言及されます。このあたりはなかなか実感がわかない人が多いでしょう。

 

作家の支出

これまでは「作家の収入」について書かれてきました。

本章では「作家の支出」について書かれます。

僕の場合に限るのかもしれないが、小説を書くために仕入れなければならない素材がない。つまり、原材料がいらない。ゼロから生み出せる(現実には、ゼロではなく、頭の何処かにあるものが素材となっている)。それが小説だと僕は認識しているのである。

ここに書かれていて面白かったのは、「思い出せないときに抽象的に書く」というものです。だからこそ臨場感が出るというのは、ものを書く上で参考になると思いました。

ということで、何かを参考にして書かないため、「支出がない」のだそうです(森博嗣さんの場合)。

 

これからの出版

おそらく本書を読んで「作家っていいなぁ」と思った人が気になるのが本章だと思います。

簡単に言うと、かつてあったような「大当り」はもうない。大ヒットするものがない、ということだ。

これは「多様化」が理由になります。

出版社は、なるべく多種多様なものを出して、そのそれぞれで少しずつ利益を拾うような商売が基本になる。

「大当り」がないからこそ、多くの作品から少しずつ利益を集めるということです。

これは出版社にとっては不利かもしれませんが、個人で活動する人にとっては大きなチャンスと言えます。小説に限らず、「文章を商売にしていきたい」と考えている人にとって、本章はオススメです。

 

今日のまとめ

『作家の収支』の最後は、お金がどうということではなく、小説家になるためのことが書かれています。

とにかく自分の作品を書けば良い。「手法」はどうでもよい。「どう書くか」ではなく、「書くか」なのである。

まずは一歩を進めること、これはどの世界でも共通するのです。