田中慎弥『孤独論 逃げよ、生きよ』インターネットを使わない著者から得るものは大きい

孤独論

芥川賞作家、田中慎弥さんによる『孤独論 逃げよ、生きよ』。

田中慎弥さんといえば、芥川賞受賞時のコメントが話題になりましたよね。

都知事閣下と東京都民各位のために、もらっといてやる

この1年前には西村賢太さんが「そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」と発言するなど、この頃の芥川賞はちょっと印象深かったように感じます。もっとも最近は又吉直樹さんが受賞したことが大きく話題になりましたが。

そんな田中慎弥さんは出てきたときはヒールな方という印象が拭えませんでした。しかし、インタビューや本書を通して知る田中慎弥さんは穏やかそのもの。「つながり」を求めすぎて疲れてしまった現代人にぴったりの『孤独論 逃げよ、生きよ』を見ていきましょう。

 

孤独論

本書は全6章で構成されています。

  1. 奴隷状態から抜け出す
  2. 便利さと生きづらさ
  3. 孤独であること
  4. なぜ読書が必要なのか
  5. やりたくないことはやるな
  6. 職業とは

田中慎弥さんといえば、高校を卒業後約15年間実家で引きこもっていたというのが有名ですよね。いわゆる「ニート生活」です。

家のなかでなにをしていたのかといえば、ひたすら本を読んでいました。それと、小説を書くことだけは続けていました。

田中慎弥さんの執筆スタイルは手書きです。パソコンやケータイは一切使わないという、かなり浮世離れしたスタイルが特徴です。「彼と同じ生活をする必要がある」というわけではありませんが、今の生活を見つめ直すきっかけになると思います。

 

奴隷状態から抜け出す

やるべきことはひとつ。いまいる場所から逃げることです。

ここではかなり具体的に「逃げる」ことについて言及されます。たとえば「会社(学校)を辞めること」もそのひとつです。

とにかく「逃げる」、生活ができなくなったら「窓口に相談する」など具体的な方法を示しています。日本は生活保護などのセイフティネットがしっかりあるので、逃げられないことなんて絶対にありません。

 

便利さと生きづらさ

究極的に便利なツールを手にしながら、多くの人は実に生きづらそうにしています。

田中慎弥さんは「情報に振り回される人が多い」ことを指摘しています。SNSに振り回される人が多いなど言わんとしていることは分かります。しかし、僕自身は「インターネットは便利」だと思っているので、意見が異なりました。

 

孤独であること

本書でもっとも重要だと思うのが本章でした。

孤独とは思考を強化する時間でもあるので、その時間が足りないと、建設的な提案や、あるいは反論ができなくなる。生産性を高められなくなるし、無理筋な要求を唯々諾々と受け入れるはめにもなります。

森博嗣さんも言いますが「孤独」や「寂しい」ことは悪いことではありません。

そして、生きている以上「どんなに願っても完全な孤独にはなれない」と本書ではいいます。「孤独になる不安に耐える」からこそ、人間の強さが生まれるのではないかと僕は思っています。

 

なぜ読書が必要なのか

「なぜ読書が必要なのか」は、僕が本を読んでいて楽しみにしているテーマのひとつです。ライフネット生命の出口治明さんも興味深い意見を述べていました。

参考:ライフネット生命保険会長・出口治明さんがスゴい!勉強法の極意は「人・本・旅」

田中慎弥さんはこのような言葉で表しています。

他者の言葉。知らなかった論理や景色。それを実感してはじめて、この世界は自分の知っている範囲よりも、ずっと先まで拡がっていることを知ることができる。

本書には田中慎弥がすすめる「本の選び方」も書かれているので、参考にしてみるのを良いでしょう。

 

やりたくないことはやるな

学校での勉強がいまの私の職業に結びついているとは到底思えず、結局のところ自分で学び取ったものでなければ、身にならないのでしょう。

このようにも書かれていますが、最後には「しがみつけばなんとかなる」ともあります。田中慎弥さんの場合、これは「小説を書くこと」です。

ちなみに僕も仕事をするときは「なんとなく良くない感じがしたもの」はやらないようにしています。

 

職業とは

最終章では「職業とは」について書かれます。

なかでも最後に書かれている文章がとても印象深く感じました。

努力と運は、けっこう密接に結びついているものです。なにかの結果は、努力のゆえでもあり、運のなせる業でもあります。

 

今日のまとめ

これまで田中慎弥さんのことを「ちょっと変わったイヤな人」(失礼)と思っていた人なら、きっと見方が変わると思います。

僕は本書を通してこのように感じました。

「何かをするには努力が必要、そのためには孤独でいることが大切、インターネットでつながりばかり求めていてはダメ」

孤独を怖れずに生きてみましょう!