たいていの本は成功した話をあとか分析して紹介するというのものが多い。一方、本書がすばらしいのは、次々と深刻な困難に直面した著者が、うまくいかないときにどう考えたか、どう切り抜けたかを紹介しているところだ。
「日本語版序文」にも書かれているように、『HARD THINGS』の魅力は「成功」ではなく「失敗」について書かれている点にあります。
よく「ビジネス本のサクセスストーリーは後付け」なんて言われますが、まさにそれを証明するような一冊です。
僕も(名前だけ)法人を持っていますし、周りで一緒に仕事をする企業たちともさまざまな困難にぶつかることがあります。そして、今だけでなくこれからも困難にぶつかるはずです。
序文にはこのようにも書かれています。
旅行にたとえるなら、本書は「楽しい旅行のためのガイドブック」ではない。「旅先で起きるトラブル対策ガイドブック」である。ただ、旅行と徹底的に違うのは、トラブルのない旅行は普通だが、起業や新規事業はほぼトラブルだらけであることだ。
トラブルだらけの起業や新規事業をはじめる前にぜひ読んでおくのをオススメします。
ベン・ホロウィッツ
本書の著者であるベン・ホロウィッツ(Ben Horowitz)は、アメリカのビジネスパーソンです。
現在はベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツをマーク・アンドリーセンと創業し経営しています。このアンドリーセン・ホロウィッツ、Facebook, Twitter, Airbnb, GitHub, Instagramなどに出資をしているのだとか(スゴい)。
本書はそんな彼の経験を「包み隠さず書いたもの」になります。
関連記事のリンクを2つ貼っておきます。
WIRED:会社にとって利益は「空気」。ゴールじゃない(ベン・ホロウィッツ)
Forbes:来日間近! 「HARD THINGS」著者が語るこれからのリーダー論
HARD THINGS
本書は全9章で構成されています。
- 妻のフェリシア、パートナーのマーク・アンドリーセンと出会う
- 生き残ってやる
- 直感を信じる
- 物事がうまくいかなくなるとき
- 人、製品、利益を大切にする―この順番で
- 事業継続に必須な要素
- やるべきことに全力で集中する
- 起業家のための第一法則―困難な問題を解決する法則はない
- わが人生の始まりの終わり
1章ではベン・ホロウィッツ氏の少年時代の話、そしてネットスケープ(アメリカの企業。現在はAOLが買収。ウェブブラウザ「ネットスケープ/Netscape」を作っていた)に採用された話、そして、ネットスケープとインターネットエクスプローラー(マイクロソフトのウェブブラウザ)の衝突について書かれます。
4章では、どのようなトラブルがあるか(主に人)、5章ではどのようにすべきか(主に人)、以降の章で具体的な方法が言及されます。
しかし、冒頭にもあるように「成功する方法」が書いてあるというより、「失敗しないための方法」が書いてあるというのが正しいところです。
人によっては「足りない」ように感じるかもしれませんが(特に儲け話が好きな人とか)、「いかにリスクを回避させるか」を知るにはぴったりの一冊だと思います。
今日のまとめ
ということで『HARD THINGS』を紹介しました。事業をやっていれば困難に立ち向かうことなんてしょっちゅうあります。僕もしょっちゅう企業と一緒に解決するために考えています。
分厚いため読み応えたっぷりですが、自分にとって役立ちそうなところを抜粋しながら気楽に読んでみるのをオススメします(本書は時系列で読んだ方がよいかもですが)。