「本を読んだ冊数が大切ではない」と言われます。
たしかに「読んだ本の冊数を競うべきではない」「本を読めば仕事ができる人」というわけではありませんが(読んだ本の冊数を自慢するのは論外)、仕事をする上で「本を読むこと=知識をインプットすること」は大切です。
佐藤優さんも『読書の技法』の「はじめに」にこのように書いています。
確かに「知は力」であり「力は知」である。知力をつけるために、不可欠なのが読書だ。
フォーブス世界長者番付(The World’s Billionaires)を見ても、1位のビル・ゲイツ、2位のウォーレン・バフェット、3位のジェフ・ベゾスなどは読書好きで知られます。
最近もっとも勢いに乗っているイーロン・マスクも読書家で有名ですよね。
そう聞くと「本を読みたくなる」、けれど「どうやって本を読んだらよいか分からない」「より多くの本を読みたい」と思う人が多いのではないでしょうか。
今回は月に300冊、多い月は500冊の本を読む(目を通す)という佐藤優さんの著書『読書の技法』を紹介します。
目次
『読書の技法』
『読書の技法』は全7章で構成されています。
- 多読の技法
- 熟読の技法
- 速読の技法
- 読書ノートの作り方
- 教科書と学習参考書を使いこなす
- 小説や漫画の読み方
- 時間を圧縮する技法
目次を見ると分かるように、「佐藤優流の読書法」がびっしりと書かれています。
「何をしないか」「何を読まないか」も大切な知の技法のひとつ
いきなりですが、「はじめに」には「何をしないか」「何を読まないか」を作ることも大切だとあります。これは習得にかかる「時間(費用)」と「それによって得られる成果」を天秤にかけて考えます。
毎日2時間の学習を1年から1年半続けるのは社会人にとって相当のコストだ。その時間、他の勉強や仕事に取り組むことによって期待される成果との機会費用について考える必要がある。
佐藤優さんは本書の中で「ロシア語をゼロから学ぶこと」より「高校レベルの英語を復習すること」を推奨しています。
月平均300冊以上に目を通す、ただし熟読している本は月に4〜5冊
この「目を通す」というのがポイントです。
どの本も「熟読」しているわけではなく、あくまで「目を通している」だけ。後述するように本を3つに分類することによって「どのように読むか」を分類します。
重要なのはどうしても読まなくてはならない本を絞り込み、それ以外については速読することである。
ここでも取捨選択の必要性が書かれています。
ちなみに佐藤優さんは以下の割合で本を読んでいるとありました。
- 超速読(1冊5分くらい):240〜250冊
- 速読(30分から2〜3時間):50〜60冊
- 熟読:4〜5冊
現在、「月に1冊本を読む」という人も少なくないなか、この冊数は驚異的ですよね。
本には3種類ある
佐藤優さんは「本には3種類ある」といいます。
- 簡単に読み流せる本
- そこそこ時間がかかる本
- ものすごく時間がかかる本
ただし、読むのにそれほど時間がかからないということと本の水準との間に直接的連関はない。
1ヶ月に熟読できる冊数(6〜10冊)から、30年間で読める冊数を計算すると3600冊になります。
3600冊というと大きな数のように見えるが、中学校の図書室でもそれくらいの数の蔵書がある。人間が一生の間に読むことができる本の数はたいしてないのである。この熟読する本をいかに絞り込むかということが読書術の要諦なのである。
こうやって淡々と数字を出すと怖いですよね(笑)。
超速読の目的は2つ
超速読の目的は2つある。ひとつは、「この本が自分にとって有益かどうか」「時間をかけて読むに値するかどうか」の仕分けである。(中略)
超速読のもうひとつの目的は、「この本はこの部分だけを読めばいい」「この箇所を重点的に読めばいい」という当たりをつけることである。
本書では「熟読の技法」「(普通の)速読の技法」「超速読の方法」が項目立てて解説されます。
超速読では以下をポイントにあげています。
5分の制約を設け、最初と最後、目次以外はひたすらページをめくる
内容は本書に詳しく紹介されています(マネするのはけっこう大変そう)。
「ノートを作る時間がもったいない」への反論
これはやっている人が少ないかもしれませんが、佐藤優さんは「読書ノートを作ること」を推奨しています。
10冊の本を読み飛ばして不正確な知識をなんとなく身につけるより、1冊の本を読み込み、正確な知識を身につけたほうが、将来的に応用が利く。
僕は、こうしてブログ記事に本の内容をまとめることで、情報を整理するようにしています(最近はけっこう慣れてきました)。
知識の欠損部分を把握する
池上彰さんとの共著『僕らが毎日やっている最強の読み方』にもあるように、佐藤優さんは教科書や学習参考書を併用した勉強を推奨しています。
また、「知識は一定期間経たないと身につかない」という持論も興味深かったです。
筆者の場合、現在読んでいる本の知識が本当の意味で身につくのは、3〜6カ月後である。したがって決して焦らず、本書で紹介した読書法を続けることをおすすめする。
僕自身、プラグラミング言語の学習を独学でしていて(これに限らずほとんどすべての分野が独学なのですが)、同じように感じます。「今、読んでいる内容」がふと腑に落ちる瞬間はしばらく経ってからです。
本書では「世界史」「日本史」「政治」「経済」「国語」「数学」といったように教科ごとに学習方法が解説されています。
リラックスするための読者は無駄ではない
リラックスするための娯楽の読書は、決して無駄ではない。リラックスして働くエネルギーを蓄えることは、仕事のために最も重要なことだからだ。
佐藤優さんは自身のことを「功利主義者」といいます(笑)。
ちょっと難しい言葉なのでWikipediaを頼ってみましょう。
行為や制度の社会的な望ましさは、その結果として生じる効用(功利、有用性、英: utility)によって決定されるとする考え方である。
結果として役に立つなら、無駄ではないということですね。
細切れの時間をどう活用するか?
第7章では「時間を圧縮する技法」が紹介されます。
ただ、佐藤優さんは自他ともに認めるショートスリーパー(4時間)なので、ちょっとマネするのは難しいですよね(僕は8時間くらい寝ています)。
そこで細切れ時間を使う方法を参考にするのがオススメです。
インテリジェンスの世界で、よく訓練されている専門家は、10〜15分の細切れ時間を有効に活用する。
電車に乗っている時間や待ち時間などはけっこうあるものです。
僕も空港で搭乗待ちの時間、入出国の審査の時間も読書をするか仕事をするようにしています。この時間を使わないと海外に行く度に何時間も捨ててしまうことになりますからね…。
今日のまとめ
『読書の技法』は本の読み方を考えている人のきっかけになる一冊です。
何度か書いているように、佐藤優さんの方法をそのままマネするのは困難ですが、参考になる場所はたくさんあります。一生のうちに熟読できる本を絞り込んで有意義な時間を過ごしていきましょう。